温亀作者、金九漢(キム・クハン)氏に聞く。その3 金九漢さんの作品のこと。

わたしは一番最初にクハンさんの作品と出会った時のことを、その日の空気のにおいと共に鮮明に思い出すことができます。
春の気持ち良く晴れた日、織物作家として広島で細々と作品を発表していたわたしは、ラオス旅行の帰り、タイの田舎町で、ガラージュベーのマダムと出会います。「まぁご縁があったのだから、作品見ましょう」とおっしゃってくれたGBマダムのところを2度目に訪ねた時のこと、GBのギャラリースペースの上がり口に等身大のチマチョゴリを着てうずくまった姿をした陶器の彫刻が置いてありました。展示してあるのではなく本当に置いてあったんです。

仕事の話しをした後、「こんな大きな焼き物、すごいですね」と言うと、「これはね、韓国の陶芸家で金九漢さんという人の作品で、慰安婦像なんですよ」と教えて頂きました。素焼きに象嵌で彩色された、全体にパステルカラーで、美しい曲線を描くスカートの美しいこと、その背中のなんと悲しそうなこと・・・
慰安婦像だと聞いて納得がいきました。1999年のことだったと思います。

5月にクハンさんの個展があると教えて頂いて、また用事を作って個展に行ったら、青磁や白磁の朝鮮陶器だったので、これまた驚いたのでした。

青磁のお茶碗はオシドリが散歩してたり、カエルが合唱していたり、魚が皿の中で泳いでいたり・・・あんな大きな彫刻のような焼き物を作る人がこんな繊細な、伝統的な作品も作るのか、なんちゅう人や!と驚きました。ちょうど作家のクハンさんもいらしたので、色々お話しを聞かせて頂きました。
その時何を話したのか、陰陽五行の話し以外忘れてしまったけれど、朝鮮陶器など東洋陶磁美術館で見るものだとばかり思っていたわたしに、青磁の美しいフォルムに楽しい象嵌の施されたお茶碗が自分の手に入るということが夢のようでした。何点か作品を分けてもらって、まだ日常使いには出来ず、食器棚の中に大事に仕舞ってあります。

GBで展覧会をさせてもらう時、わたしはいつもギャラリーに泊めて頂くのですが、クハンさんも都内で夜遅くなるような時には「経堂の帝国ホテル」と呼ぶガラージュ・ベーでお泊りになります。なので、何度かご一緒する機会もあり、クハンさんの近況は色々と聞き知ってはおりました。

2003年、新潟、津南町での妻有アートトリエンナーレでは、「かささぎ達の家」という10坪の家を焼くという大事業を完成され、次には3階建ての18坪の家を焼くんだ、とおっしゃってられて、なんとまあ、スケールの
大きな人だこと!と思ったものです。

2005年、韓国京畿道「世界陶器ビエンナーレ」ではその18坪の家が展示され、それをGBマダム主宰のツアーで見学に行ったことも懐かしい思い出です。

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右がクハンさん。左は金繕い師平澤白水さん。家を作って、窯をこの上にこしらえて酸化と還元を繰り返す方法で焼き上げたんですね。

この家を観に行った時、5月のちょっと暑いくらいの日でした。
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焼き物の家の外観ディテール。温度計が置いてあります。

室内にも温度計があって、薪ストーブも作り付けになっていて、素材のサンプルが置いてあって、その直径13センチ、長さ30センチくらいの焼き物のサンプルを手に持ったクハンさんは、「この家は外気温に関係なく室内の温度も湿度もほぼ一定しているんです。それは、この特殊な土と製法のおかげです。ほら、中が黒いでしょ。煤になってるんですよ」熱心に焼き物の家の土について説明してくれるのですが、当時のわたしには何のことやらサッパリ。陶器で出来た薪ストーブや、細部に施された象嵌や動物の彫刻にばかり「かわいぃ〜」と注目していたのでした。この素材が温亀やら陶器の薪ストーブやら、育成光線を発生させる陶器だったのです。

クハンさんは、やってることはスゴいし、話しは暑苦しいおじさんなのに、作品はなんでこうなるのか良く分からないけれど、とにかくかわいいのです。

この後、クハンさんのご自宅で作品を買い漁るという楽しい時間があって、この時は白磁のお茶碗をゲット。使いもしないのにご飯茶碗ばかり買うわたし。

さりげなく18坪の家の模型がテーブルの上においてありました。
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左隅に薪ストーブが見えます。このストーブで薪を燃やしても、ストーブの表面は手で触れる温度、家のなかもじんわり暖まって、煤が出ないから高価な二重煙突もいらないし、煙突掃除も必要ない、とクハンさんが説明してくれました。二重煙突も煙突掃除もいらないなんて、ちょっと考えられませんけれど、薪ストーブのある暮しは家を買う前から憧れているので興味津々。
この家や薪ストーブの焼き物こそ、クハンさんが長年実験を重ねた、百済の仏像の台座と同じ焼き物なのです。

この18坪の家の作品について、土は42トン必要だった、42トンの土といえば、1人の陶芸家が一生に使う土の量であること。
そして、「この作品は焼いた翌日に、冷えるのを待たず窯を取り除かねばならなかったので、ヒビが入ってひどい状態になってしまった」と実に残念そうに語っておられました。津南町のかささぎたちの家は保存状態も良いそうです。(金九漢、かささぎたちの家で検索したら、写真付きのブログが出てきます)

津南で世界中で誰も作れない陶器の家を作って、もっと巨大な家を作って、これからクハンさんは世界に羽ばたく!と思われていた時、ダンプにひかれて骨盤が4つに割れるような大けがをしてしまいます。

「ああ、クハンさん、これからって時に・・・」とGBマダムが沈痛な面持ちで語ったときのショックも忘れられません。誰もが再起不能、よくて車いすの生活だ、と思いました。

つづく。

金九漢さんからの聞き取りは、2013年1月24日、利川にて行われました。
この連載は、このたびのインタビューを中心に、これまで九漢さんから直接お聞きしたことから再構成しています。
無断転載・無断引用、お断りいたします。

温亀作者、金九漢(キム・クハン)氏に聞く。その1 青春。
温亀作者、金九漢(キム・クハン)氏に聞く。その2 百済の陶工が残した仕事
温亀作者、金九漢(キム・クハン)氏に聞く。その4 金九漢さんの妹さん。
温亀作者、金九漢(キム・クハン)氏に聞く。最終回  温亀の素材の不思議。

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コメント

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Re: グリーンスムージー

>鍵コメさん、
そうなんです、30日というのは、とりあえず期限を決めて続けてみて体調の変化を体験してみることと、青泥を飲むのを習慣づけるためのプログラムなんです。
わたしも今日は朝から出掛けたり、夜は夫勉強会だったりで、青泥は完全にお休みになってしまいました。まったく飲めないと精神的にへこみますね。
まぁ、細かいことを気にせず、目標は毎日ということで!
またご報告お待ちしております。

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