伝統衣装の行方はどうなる?

わたしが中古着物の値段の話しを母にしていたら、母の友達が着物を売ろうとした話しをしてくれました。

いわゆる「買い取り」屋さんを家に呼んで着物を買って貰おうとしたのだそうです。すると、着物などろくに見ないで「金とか、プラチナはないですか?壊れたのとか、石の外れたようなものがあるでしょ、そんなの見せて下さいよ」とクドクド言うそうです。

「今日は貴金属は売る気がない。着物だけ査定してください」と強い調子で言うと・・・

「着物には値段がつきません。タダでよければ持って行きます」

ということだった、と母の友達がボヤいたんだそうです。もちろん、母の友達ですから、それなりに良いものをたくさんお持ちだったんでしょう。結局持って行ってもらったのかどうかは聞きそびれましたが、買った時にどんなに高く、値打ちのあったものでも、着物を売ろうとしたら値段は付きません。

だから、着物を着ていると着物が集まってくる、というのは「二束三文で売るくらいなら、○○ちゃんに着てもらおう」と思うのは当たり前のことです。わたしのところに集まってきた着物たちも着物を着る人にずいぶん分けました。だって仕舞いきれないんですもの。

伯母には娘が1人いますが、伯母は自分の着物だけじゃなくて従妹の着物まで送ってきたので、従妹が着物を着たいと思っても、従妹には着物が一枚もないわけです。もちろん、彼女が着物を着たいと言ったら、わたしは彼女に着物を分けるわよ。でもおばさんの着物はほとんど人に分けてしまったので、手元にはありません。彼女は自分の母の着物は着られないわけです。

着物を着ること自体、当たり前ですがそれほど難しくはありません。ただ、難しいものにしてしまった人たちがいて、多くの人は着物は大変、着物は苦しい、着物は補正しないとだめ、と思われて(思わせて?)しまわれました。だいたい衣装を着るのに資格云々ってのはどう考えてもオカシイのです。

わたしはいわゆる“着物学院”とかそれに連なる着付け教室に行きたくなかったので、こんな年になるまで着物が着れなかったけれど、ここ10年くらいの普段着きものブームのおかげで難しくない着物の着方、つまり、当たり前の着物の着方を教えてくれるところが増えたり、そんな着方をしている人が着物の着方を教えてくれたりするようになって、日本の伝統衣装も洋装に駆逐されずにどうにか持ちこたえるのかもしれません。

ここ数年、わたしは日本民藝館展に参加していて、講評会に出てるのです。織物部門なので講評も織物部門の講評を聞いているのですが、去年の展で、着尺(着物の反物のこと)の縞が洋服地のように均等に振られたもの、チェックの絣も柄が均等になったものが出ておりました。講評で「背縫いのところがどういうことになるか、和裁をする人に相談してみてください」とおっしゃられておりましたが、背縫いのことを考えたら、縞でもチェックでも、片側の端は柄を控えておかないといけないのに、着尺を織る人も着物を着ないのでそんなことがわからないわけです。着物を自分で着れば、洋服地のような生地のデザインにはならないわけです。着尺を織る人が着物を着ないというのはちょっと驚きですが、着物を着ておりものもするという人のほうが今では少ないんですね。民藝館に応募する着尺を織る人が着物の反物のデザインの基本が分かっていない、というのはちょっと驚きですが、着物離れの根の深さを実感した出来事でした。

そんなこと言ったって、着物着るのは難しそうだし、手入れも大変だし・・・って二の足を踏んでる人もたくさんいると思います。最初だけ習ったら、後は慣れるだけ。わたしが着物を着ている人に「教えてほしい」と言っても「慣れればいいのよ。外で帯が落ちて2回くらい大恥かいたら上手になるわよ」と言われたけれど、ほんとにその通り。ただ、一番最初はやっぱり誰かに教えてもらわないといけない。着物を楽そうに着ている人は是非とも「いいわねぇ〜楽そうに着て」と着物着たそうにしている人には着方を教えてあげてほしい。わたしも是非そうしようと思っています。

洋服と違って着物の面白いところは、柄や組合せだけじゃなくて、着方で着る人の人となりがなんとなく良く分かるのです。衿の抜き加減、衿合わせの角度、帯の位置やおはしょりの長さ、裾の合わせ方など、素材や色柄以上にその人がどんな女性なのか雄弁に語るような気がします。自分好みの着方ができるようになるまで、しばらく練習が必要ではあるけれど、それがまた洋服にはない楽しさがあります。正直、こんな面白い衣装の世界があったんだ、と自分で着物を着るまで思いもしませんでした。

今わたしの目下の興味は、着物が着られる人、着物を着ていた人、つまり、母の世代、その下の団塊世代の人たちがどうして着物を一切着なくなっちゃったのか、その理由を色々聞いています。着物を着ていると、ちょうどそれくらいの世代の人たちがものすごくホットな視線を投げかけてくるのです。着方について色々言ってくれるのもその人たちだし、着物についてなお話しをしてくれるのもその世代の人たち。着物への複雑な思い、着物への愛着、なんだかんだ言って、着物大好きなんだなぁ、と思うのです。

着物が着られる団塊世代の人にとって、洋服を着て暮すことは選択のひとつでしかないかもしれないけれど、着物の着方を知らない世代にとって、着物は衣装ですらありません。このまま着物を着なければ着物という伝統衣装は本当に失われてしまうのです。今ある古着の山がなくなってしまえば、もうどんなにお金を出しても手に入ることは叶わない、技法も材料もわからない、幻の染織になってしまうと思うと、着物を着るなら今だろう、今しかないだろう、と思うのです。

着物を着る人が1人でも増えたら、捨てられる着物が何枚も助かって、また袖を通してもらえるんですもの。着物着てどこ行くの?って、映画でも友達とランチでも、夫とお好み焼きでも、なんでもいいんです、「あ、着物の人がいる」と思ってもらうことも大事なんですもん。

着物という選択肢が増えて、着道楽なわたし、楽しみが3倍増しくらいに増えました。
着物興味あるのよ、っていう方、足踏みしてないで着物着てみて下さいね。

実家にあった八寸の帯の反物、かがるだけだっていうから自分で仕立ててみた。畳みやすいように開き名古屋に仕立てたけれど、締めにくいようならかがってもいいな。

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母の箪笥は宝の山です。さて、この帯はどの着物と合わせよう。うふふ。

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