「きものを纏う美」節子・クロソフスカ・ド・ローラ

節子さんにはたいして興味がなかった。
あ〜、またヨーロッパ貴族に嫁いだスノッブな女の自慢話、こちらではこーでござーますのよ、てな話しだろう。バルチュスがなくなって生活のために私生活を切り売りしているんだろう、とちょっと意地悪に考えていたけれど、彼女の着物姿を見て考えを改めた。

パーティーの時に藤原新也さんが撮った写真、胸のところは自然にダラーんと生地が垂れていて、衿合わせもゆったりしていて、実に自然で気持ちがいい。そうそう、着て動いたらこんな風になるよね、という着姿だった。

着物を着る人としても有名な節子さん、ちょっと読んでみようじゃないの、と図書館から借りてきた。

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バルチュスはもうすでに有名な画家で、名前からして貴族だとわかる。このバルチュス氏、日本文化ラブな人で、「日本人はどうして自国にあるすばらしい衣服を大切にしないのか、日本人女性の体型にはきものが一番美しい」と言って、若い妻の節子さんに着物を着るようにまぁ言えば押し付けたわけです。

節子さんが着物を自分できるようになったのは結婚後のことだから、最初のころは帯を結ぶのにバルチュス氏が汗だくになって手伝ったというエピソードが語られます。

つまり、節子さんは着付け教室や着物学院で免状をもらったような着物教育を受けなかったと知れます。そして、お母様や着物好きの叔母さまが自然と着物の手ほどきをしたのでしょう。

外国暮らしというのも良かったんでしょう、「日本ではしきたりがいろいろあるそうですが、こっちはカンケーないから自由にやってます〜」と言いながら相手に礼を失しないように気を配ることは忘れないので、その点きもの初心者としても大変参考になります。

そして、結婚後節子さんも絵を描き始めますが、「油絵じゃなければいい」とバルチュス氏に言われてグワッシュで描きます。これは、日本人の感覚に油絵の具は合わないというバルチュス氏の意見なのですが、慧眼だ!と膝を打ちました。

節子さん、誤解してごめんなさい、ご自身のアイデンティティーはまず自分は絵描きである、というところにあるようです。お家柄、お仕事柄、文化大使のようなお仕事も少なくなさそうですが、○○の奥様で、△でござーますのよ、というその人の本質とはあまり関係のない属性にアイデンティティーを置いてない人の揺らぎなさが「こちらではこ〜でござ〜ますのよ」という無駄な見栄がなくて読んでいて気持ちがいい。

ただ、編集の要望なのか、バルチュス夫人としての節子さん、素敵な暮らしの節子さんを過剰に演出されているところがきっとご本人にも不本意なのではないか、とこちらが心配になるほどだ。

これはわたしが○○(連れ合いの職業)夫人だとは思ってなくて、自分は染織家だと思っているし、連れ合いは大事だけれど、彼が○○だから一緒にいるわけじゃない、という気持ちと通じるように思うのです。だからいつまでもバルチュス夫人と言われるのも不本意だろうなぁと思う。

貴族なのだから、掃除洗濯炊事に庭の水やりまで全部自分でするわけじゃない(部屋が50もある家だし絶対無理!)だろうけれど、着物を着てくつろげるというのは、私たちが失ってしまった身体感覚だ。

わたしの父は仕事から帰ると丹前に着替えていた。バルチュス氏も家では紬を愛用していて、「きものは体に馴染み首を絞めるネクタイをしないでよいからきもちがよい。纏うものだからよい」と常日頃言っておられたと書いてある。くつろぎ着でも美しいという意味だろう。わたしも家でジャージは嫌いだし、連れ合いにも着てほしくない。体操服は運動の時だけにしてほしい。

節子さんはきものが日常着だった時代のアッパークラスののきもの姿をそっくりと引き継いでいるのかもしれないなぁ。ヨーロッパに行かれて「いろいろなしきたり」に影響されずにきもの本来の良さを残している貴重なものなのかもしれないなぁ、と思ったのでした。

そうやって考えたら、フランス人貴族になった人に「あの人の着方はなってない!」とは(人のきものの着方にあれこれ口出ししたい人たちも)大声じゃ言えないだろうから、節子さんありがとう!と思うのです。

最後に紬はとてもいい、という章があるのですが、紬の訪問着が便利だという話しがはぁなるほどなぁ〜と思いました。

紬は布が丈夫なので、引っかかったり擦れたりする心配が少ないし、訪問着でもさりげなくて便利なんだそうです。はぁ、確かに綾子に友禅の訪問着などキラキラしすぎて浮いちゃいそうですもんね。正式な夜のパーティーでなけらば紬が便利なんですって。わたしはつい紬のきものばかり買ってしまうので、嬉しくなりました。

憧れの生活とか、優雅な○○という切り口じゃなくて、きちんと画家として評価されるべきだし、画家としての節子さんを編集の中心に据えた本があってもいいように思いました。

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