全ては最善。

父の病気がわかったのは10月末ごろ。

母は「不覚にも全然気がつかなかった。食が細くなったとは思ったけれど、それほど進んだ病気だとは思いもよらなかった」と何度も話していた。

わたしが父の病気を知ったのは、弟が電話で知らせてくれたから。11月の半ばには大阪に行く予定があったので、父はその時に言えばいいから黙っておけと弟には言ったらしいけれど、弟は電話してくれた。

個展から帰ってきたばかりのことで、弟の電話の後、たまたま出勤する用事のなかった夫と日帰りで実家に行ったのでした。11月の初めのころだった。

桜は無理だろうけれど、お正月は家で過ごせるか、とその頃には思ったけれど、その後は早かった。12月3日に入院して、ドクターから「あの状態でよく歩けましたね」と驚かれたけれど、その後数日トイレにも自分で行っていた。わたしが行った8日には母に支えられてトイレに行ってたけれど、10日に行った時にはもう自力でトイレに行くことはなくなっていた。

父の入院がもっと早くて展覧会の前だったらわたしは手伝いに行けなかっただろう。展での滞在が終わったので父の付き添いに集中できた。

勤め人の弟にも当直の交代をしてもらうのは気の毒だったけど、なんとも得難い経験なので、弟にも病院に泊まってもらって、彼は週に一度会社を休んで平日の当直もしてくれた。これで私はもちろん母もどれだけ助かったかわからない。

父の病気で長年家に戻っていなかった兄が戻ってきて、父とはいろいろゆっくり話したようだった。これも父の病気がなければ叶わなかったし、兄も帰る切っ掛けがなかっただろう。

22日の早朝父は逝った。

正月休みに入る前に葬儀なども済ませることができたし、年末年始の休みに突入したことで、役所や金融関係の手続きについて、ゆっくり考えることもできたし、手続き自体ができないので良い休息になった。

入院から20日ほどもったので、十分にお別れすることもできたし、お見舞いの人にも来てもらえた。お金の準備をすることも出来たし、葬儀についての準備も最低限だけど出来た。

家の片付けまではできなかったけれど、交代で付き添いをすることに全力を注いだから、看病疲れで倒れる人も出なかったし、何より誰もが思い残すことなどないほどお世話ができた。これは葬儀の後の祭壇がつくれないとか、お供えのご飯が炊けないとか、そんなことよりも重要だったと思う。

ガンだったことで、父は家などの財産を介護施設に入るために手放すこともなく残すことができた。
末期で手がつけられない状態だったので、ガン治療をして苦しむこともなかった。
苦しむ姿を見なかった家族は幸いだった。
医者以外のことで余生を楽しむ気がなかった父は入院の前日まで診療を続け、生涯現役を貫くことができた。これは驚くべきことで、事故や事件に巻き込まれずに生涯現役というシナリオを考えるのはなかなか難しい。

父のいない実家でお正月を過ごして、タバコの煙害もない、テレビの爆音とチャンネルガチャガチャもない、タオルもタバコ臭くない快適な実家がほんとうに、父はもういないんだと寂しい気持ちもないことはなかった。

母とあれこれ話していたら、ほんとうにこれ以上ない!というほど最善のタイミングで最高のシナリオだった。

「なんにも心配することあらへん。ちゃんとぜんぶウマイこと行くって言ったやろ」と言ってるようだ。

この世で起こることは最善のことばかりだ。

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コメント

No title

ぺんぎんさん、ごぶさたしています。
ほんとに急にいろんなことがあったんですね。心よりお悔み申し上げます。

うちの時を思い出しました。でもきっとどんな状況であっても、それがお父様とご家族にとって最善だったのだと思います。
あとはお母様のケアですね。ぺんぎんさんならきちんとなさりそう。

そしてそうこうしてるうちにあっという間に自分たちの黄昏期。
ぺんぎんさんはいまでも毎日を丁寧に暮らしてるのでほんとに尊敬しています。

今年もブログ楽しみに拝見させていただきます。
暖冬とはいえどうぞお体ご自愛ください。

No title

生涯現役。私もそうありたいものです。

Re: No title

> maloさ〜ん!!
お久しぶりです。コメント&お優しいお言葉、ありがとうございます。
急だったんですが、あんまり長引くのもナンですものねえ。
母はなんだか重石が取れたというか、妙にのびのびして楽しそうですが、父の入院中に持たんでもいい大荷物を持って急がんでもいいのに、電車を逃すまいとエスカレーターを走って登ろうとして転けて・・・腰が痛いと言うのが唯一の気がかりです。

maloさんもどうぞご自愛くださいませ。

Re: No title

> 菊さま、
お百姓さまのような高貴なお仕事は生涯現役です。どうかお怪我だけはお気をつけて。

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